


INTRODUCTION
この映画の全ては、「車の事故で家族を亡くしたある男性が、過去に戻ろうと後ろ向きに歩き出した」という記事からはじまったと、アンシュル・チョウハン監督。
後悔の念を浄化する為に過去に戻りたいと思う人間の願望。全編を通して、モノクロームの圧巻の映像と、プリミティブと哀感が絡み合う美しい旋律で紡ぎ出す独特の映像世界。アニメーターと言う経歴を持つインド出身の異彩 アンシュル・チョウハンだから成し得た世界観が、観客である私たちの目前に具現化されていく。
ソラを演じた円井わんは、ドラマ『全裸監督』(19)、映画『タイトル、拒絶』(20)ほか21年には5本の公開待機作が控えている期待の俳優。謎の男を演じた間瀬英正は、本作で大阪アジアン映画祭最優秀男優賞を獲得し、彼もまた将来が嘱望されている。また父親役の山田太一は、映画『パッチギ』の出演やTBS『報道特集』のナレーションなどで活躍する傍ら、本作では演者としてだけでなく、ロケ地の提供、製作費のサポートなど、アンシュル監督のクリエーションを公私に渡って支えている。
ワールドプレミアとして上映されたエストニアのタリン・ブラックナイト映画祭でのグランプリ&最優秀音楽賞受賞をはじめ、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭での国内長編コンペティション部門 優秀作品賞受賞、ニューヨークで開催されたジャパンカッツ大林宣彦賞など、数々の映画祭で高い評価を獲得してきた衝撃作が、満を持して遂に劇場公開される。これは全く新しい時代の日本映画を予感させる。
STORY
高校生のソラ(円井わん)は、父親(山田太一)と二人暮らしだが、その関係は冷え切っている。そんなある日、急死した祖父が第二次世界大戦時の日記の中に遺していた、記号化された宝の存在を知ることとなる。彼女が密かに宝の探索を試み始めたとき、突然無言で後ろ歩きをする見窄らしい男(間瀬英正)と遭遇する。ソラの身に、ほぼ同時に起こった二つの事象。それは果たして何かの啓示なのか?
FESTIVAL & AWARDS
・タリン・ブラックナイト映画祭(PÖFF) 2019 - グランプリ&最優秀音楽賞受賞
・SKIPシティ国際Dシネマ映画祭 2020 - 国内長編コンペティション部門 優秀作品賞受賞
・大阪アジアン映画祭 2020 - 最優秀男優賞受賞
・ジャパン・カッツ 2020 - 大林賞受賞
・グラスゴー映画祭 2020 - 公式セレクション
・Ostrava Kamera oko 2020 - 公式セレクション
・ジャパニュアル・日本映画祭 2020 - 公式セレクション
・ハイファ国際映画祭 2020 - 国際コンペティション公式セレクション


CAST

Wan Marui / 円井わん
大阪出身。幼い頃から役者を目指し高校卒業を機に上京。スタイリストの助手等で現場に行き独学で芝居を学ぶ。 内田英治監督作品「獣道(Love and other cults)」で映画デビュー。 西川達郎監督「向こうの家(the others home)」佐藤佐吉監督「黒い乙女Q&A(Black Maiden)」、Netflix「全裸監督(NakedDirector)」テレビ東京「Iターン」「セトウツミ」「100万円の女たち」等のドラマやMusic video等映像を中心に幅広く活動し、21年には公開待機作品が5本ある。今作で長編初主演となる

Mase / 間瀬英正
愛知県出身。青年座研究所を経て舞台を中心に活動している。主な出演作は水戸ACM劇場「赤シャツ」(演出:文学座・西川信廣氏)、Tファクトリー「レディオルガの人生」、青蛾館「毛皮のマリー」、ワンツーワークス「グロリア」など。2021年2月には桑原裕子作「甘い丘」に出演予定。映像では「KONTORA」にて『第15回大阪アジアン映画祭最優秀俳優賞』を受賞。「24JAPAN」、「相棒19 元旦スペシャル」などドラマにも出演している。また、イラストレーターとしても広告・出版等に作品を提供している。自転車キンクリーツカンパニー所属。

Taichi Yamada / 山田太一
NYのリー・ストラスバーグ演劇専門学校にて演劇を学ぶ。アクターズスタジオなどで活動。故・今井雅之に師事し今井雅之の『THE WINDS OF GOD』のブロードウェイ公演にもスタンドインとして参加。帰国後俳優として映画『パッチギ!』ではラストシーンのラジオ局でパーソナリティー役を演じた。そこから自身の劇団『東京遊劇手』を立ち上げる。現在は舞台・映画・ドラマで活躍中。他の出演映画は2011年『ふるさとがえり』2015年『アイズ』(鈴木光司原作)2016年『スクールオブナーシング』2017『東京不穏詩』他

STAFF
WRITER/DIRECTOR/PRODUCER
ANSHUL CHAUHAN / アンシュル・チョウハン
アンシュル・チョウハンは1986年北インドで生まれ、陸軍士官学校で訓練を受け、大学にて文学士を取得した後、アニメーターとして2006年からパプリカスタジオにて働き始める。2011年に東京へと拠点を移し、最初に働いた株式会社ポリゴン・ピクチャーズでは、エミー賞を獲得した『ディズニーXD トロンuprising』に携わり、その後株式会社オー・エル・エムや株式会社スクウェア・エニックスなどで働く。今までに携わった作品は『ファイナルファンタジーXV』、『キングズグレイブ: ファイナルファンタジーXV』、『キングダムハーツ3』そして『ガンツ:オー』など多岐にわたる。
アニメーターとして日本で働く傍ら、自主制作への情熱も芽生え始め、2016年にKowatanda Films(コワタンダ・フィルムズ)として活動を始める。そしてこれまでに、長編映画2作を完成させ、両作品とも世界各国の映画祭にて様々な受賞を遂げている。
COMMENT
「コントラ」は私にとってとてもパーソナルな作品です。インドの家族を思いながら物語を構成していたため、それを日本で映画化することに戸惑いも感じていたものの、第二次世界大戦時に特攻隊員となった生徒達の手紙を読む機会に恵まれ、国が違えど思うものは同じであったと強く感じました。これに背中を押されたものの、暫くの間このコンセプトをどう実現していくかを考えました。そんなある日、岐阜を訪れた事がこの物語の大きな転機となってより現実的となり、今までの自分の人生経験を台本にはめ込め始めました。主人公ソラは祖父が残した日誌を頼りに彼が過ごした軍隊生活の軌跡を辿る、そして不審なホームレスの男は後ろ向きに歩く。どちらも後悔の念を浄化する為に過去に戻りたいという人間の願望を映し出しています。この映画は、精神的にも身体的にも過去を遡り自身を知るという着想に基づいています。また日本映画において、女子高校生が登場する映画は珍しくありませんが、私はそれらに出てくるありきたりなラブストーリーの型にはまらない主人公を描きたかったのです。それは、現代で何不自由なく暮らしている少女が、自分とはかけ離れた知られざる現実を知っていくというものは、私が描きたいと思っていたものでした。限られた予算の中で、10日間という短い期間での撮影でしたが、結果として海外からとても良い反応を受けたことに対して大変嬉しく思っています。我々は、チーム一丸となって日本の皆さんと強く深く繋がれる作品を作れるよう尽力しました。この映画を通じて、若い世代の皆さんに祖父母世代が経験した過去を垣間見ていただけたらと思っています。劇場で皆さんにお会いできるのを楽しみにしています。
MUSICIAN
YUMA / 香田悠真
近年は映画音楽を数多く手掛ける中、舞台芸術の音楽監督等も務める。本作品では、第23回タリン国際映画祭にて最優秀音楽賞を受賞。現在は東京を拠点に活動。
COMMENT
彼の映画から感じる、遠い過去への強い畏敬、敬愛。失われつつある記憶や形式の、一つの言語を絶やさないための、現代への静かな投影。彼と、彼らと、新しい協和音を探求した、情熱と誇りのある作品です。
CINEMATOGRAPHER
MAX / マックス・ゴロミドフ
エストニア出身でBaltic Film & Media Schoolを卒業した撮影監督とカラーリスト。ドキュメンタリーとフィクション映画の制作に関わり続けている。2014年に来日し、東京の株式会社デジタル・ガーデンにシニアカラーリストとして就職。現在までに、エストニアと日本において様々なジャンルの映画制作に撮影監督やカラーリストとして関わっている。2017年からは、エストニア映画協会からの投資を受けて東京代々木公園についてのドキュメンタリー映画プロジェクトを自身で始動させ、現在ポストプロダクション段階となっている。
COMMENT
本作は、アンシュル・チョウハン監督と2作目となる長編映画です。制作時には、才能溢れるキャストやクルー、そして私が最も熱望する即興での撮影スタイル(ほとんどドキュメンタリー調)で、短期間で撮影できるものの限界に挑戦しました。是非とも、この燦然たるモノクローム映画をお楽しみください。
CO - PRODUCER
Mina Moteki / 茂木美那
外語大学英米語学科卒。在学中のアメリカ留学を通して、アートやCGに魅了され方向転換し、現在はCGアニメーターとして働く。関わった作品はファイナルファンタジーXV、Kingsglaive、Gantz:Oなど。2016年にKowatanda Filmsを発足依頼、アンシュル監督と映画制作を共にしている。現在は大手ゲーム会社にてCGアニメーターとして働く傍ら、Kowatanda Filmsではプロデューサーとしてだけでなく、通訳や台本翻訳、制作進行アシスタントとしても携わる。
COMMENT
1作目『東京不穏詩』を経て、『コントラ』でKowatanda Filmが大きく飛躍したと言える作品になりました。
人間は忘れる生き物ですが、少なくとも今を生きる私達はこの映画を通して、じわじわと体に染み込んでくるこの感覚を、過去の想いを、この瞬間を忘れてはならないのだと感じることは出来るはずです。
作中の音楽がより没入感を駆り立て、モノクロームでありながらも色を想像させる程の映像美です。是非とも、劇場でお楽しみいただけますと幸いです。
SPECIAL THANKS FOR THE SUPPORT
有限会社桜井ダイカスト工業の皆さん
岐阜県関市と武芸川町の皆さん
関市観光ホテル武芸川温泉
NPO法人音楽座ぎふの皆さん
武芸川映画制作委員会



COMMENTS
戦中と現在。時代の邂逅を描いた傑作で、多くの海外映画祭での受賞も納得。日本映画で失われつつある監督の“視点”が際立つ。ぜひみて欲しい作品だ。
内田英治 さん Eiji Uchida
映画監督
この愛おしさにもあの辛さにも 合間に挟まる可笑しさにだって 説明がつかない。言葉にならない。 日常が一転し、非日常となれば 良くも悪くも いつしかそれが日常になる。 大切に、大切に、生きようと思った。
伊藤沙莉 さん Sairi Ito
俳優
「幾重にも折り重なった素晴らしい物語構成」と「真の映画体験」
マイク・ニューウェル Mike Newell
映画監督 (『ハリーポッターと炎のゴブレット』『フェイク』『フォーウェディング』)
途轍もなくインパクトのある映画だった。殺気だった少女の不可解な心の移り変わりに翻弄されながら、最後まで見た。息苦しさを緩和し幻惑する音楽に誘われる予測不能な物語。
行定勲 さん Isao Yukisada
映画監督
「パラサイト」や「はちどり」が少人数の家族だけを見つめて社会と歴史を照射したように、「コントラ」も片田舎の家族とそこに出現した後ろ向きに歩く男だけから今の社会と歴史を照射する。なんと壮大で挑戦的な作品だろう。
暉峻創三 さん Sozo Teruoka
映画評論家・大阪アジアン映画祭プログラムディレクター
『コントラ』は今年日本映画のベスト10は間違いない!パワフルで感動的で考えさせられる映画。何よりも、長い映画にも関わらずとても観やすい。是非観ていただきたい作品です!
アダム・トレル さん Adam Torel
米映画配給会社代表
”美しい”田園風景とコントラストを描くように、過去や負の感情と上手く向き合えない我々の不器用さと残酷さが暴かれていく気がします。アンシュルの羨望でも投影でもない、日本への静かな目線を僕らは受け止めないといけないと思う。
池貝峻 さん Shun Ikegai
ミュージシャン yahyelボーカル
冷たくて暖かい、暗くて明るい、夜明けの晩のような世界。 止まない憂いは、少女を大人にする。
Naomi Paris Tokyo さん
Jan and Naomi ミュージシャン
チョウハン氏の長編2作目は明らかな技術力の高さを見せつけた。低予算にも関わらず、本作は光沢のあるモノクロビジュアルと力強い演技力、過去と未来、リアリズムとマジカルリアリズムの重層的融合が織りなす家族ドラマであり詩的な寓話と言える。
スティーブン・ダルトン Stephen Dalton
Hollywood Reporter
モノクロ映像によって浮かび上がる情景や移り変わってゆく人物の表情。 作中の音楽によって増幅する人間の感情や風景描写。 家族関係から戦争や日本の体制まで描かれた今作は狂気的でもあり、美しい物語でした。
嶌村吉祥丸 さん Kisshomaru Shimamura
アーティスト
物言わぬ謎の男こそ、人を繋ぐ不思議さ。 外圧や規律への「暖かな」反旗の象徴が、謎の男の正体?だったのかもしれない。 変わらず日常にある日本的な鬱屈と重さ、そこに切り込む奇妙で唯一無二な世界観に魅了されました。
吉泉聡 さん Satoshi Yoshiizumi
TAKT PROJECT 代表 デザイナー
『コントラ』(2019年)は家族への罪悪感と後悔を表現した力強く情熱に溢れた作品だが、この映画はインド人監督。エストニア人撮影監督の国際クルーによって単色(白黒撮影)で制作され、日本をテーマとしながらも、どこか中央ヨーロッパを彷彿とさせる作品だ。高校生の少女を演じた円井わんや、後ろ向きに歩く男性を演じた間瀬英正の演技は特に印象深い。(間瀬氏は劇中の日誌に描かれた絵も担当している)
デイヴィッド・マーメルスタイン David Mermelstein
The Wall Street Journal
モノクロームの美しい映像によるのか、ピンと張り詰めた音楽の空気感か、あるいは寓話的な登場人物との距離感なのか。どこにでもありそうな日本の田舎の情景が、別世界のように見えてくる。にもかかわらず、自分の中の何かとコネクトしている感覚がじわりと残る。
近森基 さん Motoshi Chikamori
アーティスト/デザイナー
映画なのに、演劇のようで その戯曲は、崇高なダンスのようで、古典と現代劇をうまく交差させていた。 モノクロの世界観が、モダンさもあり、クラシックな美しさを感じた。 なくなったおじいさんの洋服をソラがあげた瞬間の男の涙に、私も涙した。 後ろ向きに歩く男が何者なのか、それはこの体験を得た人が決めるべきだろう。 私は、発展し続ける経済社会に警報をならす現代人が失ったもの、そのものの象徴であると感じた。
杉本学子 さん Noriko Sugimoto
スタイリスト
『コントラ』はジャパンカッツ映画祭のNext Generation部門において、大林監督の反戦や反自然主義映画へのオマージュのようだからという理由だけではなく、個人的に1番気に入った作品であった。デジタルでありながらも白黒で撮影された本作は、祖父か第二次世界大戦の兵士の亡霊か、後ろ向きに歩く男性(間瀬英正)と親しくなる少女ソラ(円井わん)の様を、ゆっくりと流れるペースで表現することで、誰かを失った時のあの不思議で拭えない感覚を映し出すゴシックファンタジーである。大林監督の作品のように、本作は独特な非現実性を観客の心に溶け込ませる。絵画のような長回しや撮影監督マックス・ゴロミドフによる鮮やかでディテールに富んだ映像、香田悠真による重いサウンドスケープによって作り上げられる不穏な雰囲気は、物語よりも効果的なものがある。『コントラ』はソラの暗い過去を示唆するようなネガティブスペースや環境音、意味深な沈黙によって埋め尽くされている。
サイモン・エイブラムス Simon Abrams
RogerEbert.com
この日本映画は、家族関係と戦争で負った傷への深い瞑想を抽象的寓話として表現され、今村昌平監督や大島渚監督を彷彿とさせる。実際には、この映画はインド人監督アンシュル・チョウハンとエストニア人撮影監督マックス・ゴロミドフによって制作された。
ヴィクター・ フラガ Victor Fraga
Dirty Movies
視覚的にとても印象強いこの不思議な家族ドラマは、安易に答えを提示はしないが、最初から 最後まで一瞬たりとも観客を飽きさせない。
リチャード・グレイ Richard Gray
The Reel Bits
歴史と現実が哀愁を帯びながら出会う、格別な成長物語。
ジェイソン・マーハー Jason Maher
VCinema Show
「映画業界が 危機的な変化に直面している今、ネクストジェネレーション・コンペティション部門は我々、審査員に日本映画界の未来を見据えるという意欲をかき立てました。受賞作品は、過去の重さと、それに一人ではなく、一緒に取り組む人たちの責任を探求しています。過去に根ざした作品でありながら、登場人物の少女が成長する過程の多感な状況をきめ細かく描かれていることと、少女がいかにして道導となったかに心を打たれました。この作品の監督は、映画という枠の中で彼独自の世界を創り上げるべく、日本を見ることができる双眼鏡を持ち続けることができる監督だと信じています。猛スピードで変化し、進化する NEXT GENERATION。奇しくも最も大和魂を感じる一本、そしてこれからの未来に最も期待を覚えさせたのは後ろ向きに走る男を主人公にした映画だった。2020 年日本映画祭ジャパン・カッツの第1回大林賞はアンシュル・チョウハン監督の『コントラ』に贈ります。(ジャパンカッツ公式ステートメントより)
安藤桃子 ジュリアン・ロス 高松美由紀
ジャパンカッツ2020審査員

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